2008年9月に日米同時出版。分厚くて内容の濃い本だったが、広島旅行の往復で一通り読めた。世にあまたあるgoogle本の中では、最も新しくて良質な本なのではないだろうか。
日本のグーグル本を読んでると「全知全能の天才集団がmicrosoftもyahoo!もなぎ倒して世界制覇に向けて邁進している」ような印象を受けてしまうが、あまり注目されないところで失敗をけっこうしている。動画検索ではgoogle videoが大失敗に終り、買収したyoutubeからもいまだに利益を生み出せていない。また、有料で専門化が質問に答える「Google Answers」はユーザー同士が質問・回答をしあう「yahoo answers」(日本の知恵袋)に敗れ去った。現在圧倒的なシェアを誇る検索にしても、wikipedia式に人の手も使った「ソーシャル検索」が脅威となりつつある。アルゴリズムを使って人の手を経ないでやるサービスは得意でも、ユーザーを巻き込んでコミュニティを作るようなサービスは若干苦手なようだ。
他にも、
・googleは本当にイメージ通り開放的な企業なのか
・googleがfacebookに対し感じている脅威
・サービス群を支える巨大なデータセンターの存在
など、新たな発見や視点を多く得られる本。礼賛でも批判でもない中立的な立場(若干google寄り?)からここまで詳細に書かれた本は貴重なのではないだろうか。設立当初からyahoo!をめぐる騒動までがおさえられているし、大学で「google概論」という科目があるとしたら教科書になりそうな本。自分は図書館で借りたが、買っても2000円の元はとれて余りある本。
ところで、この本の出版元はNHK出版。NHKは少し前にも「google革命の衝撃」をやってたし、最近は「デジタルネイティブ」というのもやってた。さらにオンデマンドの番組配信も始めたりと、テレビ各局の中ではそういったことに一番積極的みたいだ。責任者の人がそういうのが好きなんだろうか。NHKは民放と違って利益を中心に考えなくてもいいから、やりやすいのかもしれない。公共放送として、遅々として進まない「放送と通信の融合」の旗振り役になって欲しいですな。
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