2009年1月29日木曜日

「かんぽの宿」の売却騒動

 「作るのに2400億円かかったのを100億で売るのは安すぎる」とか、「1万円で売られたところもあった」とかいろいろと騒がれているが・・・。現在価値を算出するのに建設にかかった費用は無関係では? 

 ちょっと解説をすると、建設にかかった費用というのは今後保有し続けてもどこに売却しても回収できるわけでは無い。どの選択肢を選んだとしても建設に2400億円支出したという事実は変化しないので、そういう費用は意思決定にあたって考慮すべきでは無い。これを「埋没費用」とか「埋没原価」とか言って、建物の建設費なんかはその代表例となる。継続保有化か売却か(どこにどのような条件で売るか)を決断するに当たって考慮すべきなのは、過去にいくら使ったかではなくそれぞれのプランで将来にいくら利益が得られるか。2400億円は何をやっても取り戻せないんだから、そういうのを意思決定で考慮すると合理的な意思決定ができなくなる。

 この埋没費用の考え方は会計や経済を少しでもかじったことがあれば分かっているはずの事なんだが、鳩山氏はそれを理解した上でああいう発言をしているのだろうか。毎年億単位の赤字が発生しているなんて、もはや「資産」ではなく「負債」と呼ぶほうがふさわしい。それを一括処理できる上に109億手に入れば上出来ではないですか。相当古い建物も多いようだし、それこそNHKの「ハゲタカ」みたく「査定価格1円」がずらっと並んでもおかしくは無い。埼玉県の知事が「価値の高い物権も一緒くたにして売却された」と怒っていたが、そういうのも含ませるから丸ごと買ってもらえるということだろう。玉石混交だから買い手がつくのであって、瓦礫ばかりでは金を出しても引き取り手はでないだろう。

 それと、鳩山総務相の「地元と一体となって経営すれば黒字化できる」というのは一体何を根拠に言っているのか意味不明。「地元の人が力を合わせて創意工夫を重ねれば」という幻想のようなものは、日本各地の三セクの失敗で砕け散ったはずですが。それに、地元の業者が譲渡先として優先されるような制度を作るとしたら、それこそ「不透明な譲渡」で問題になるだろう。地元の観光業者だったら1円でも売る?