2009年5月6日水曜日

昭和13年発行「南知多案内」(5) 大井 .

 大井の紹介文

---------------------------------------------------

南知多師崎町大井は衣浦湾の名港として知らる、東方は日間賀、佐久島の展望よろしく北、西、南に山をおんで夏は涼しく冬暖かで有名である、本年大井海岸より和田に至る延長一千五十米の観光道路が完成した、同観光道路付近は風光明媚であつて海水浴の好適地であるのと別荘も多く旅館の計画あり非常に将来の発展が期待されてゐる

 ▼史跡として弘仁五年弘法大師四十一才の御時知多を御巡錫の砌り南知多大井港聖崎に御上陸御護摩を御修行された霊場があり知多新四国参詣者を始め賽者が非常に多い

 ▼名産として海の珍味「このわた」の産地として又三百年の歴史を有し全国に其の名をしらる。銘酒初老、特急、勝祝の醸造元があり有名である。

 ▼交通 省線武豊駅からバス五十分、名鉄電車は河和駅よりバス二十分、名鉄神宮前より電車バス連絡大井迄片道一円四〇銭である

 ▼海路 愛知商船の定期船が一色武豊半田亀崎へ師崎日間賀島、篠島福江方面へ毎日午前午後二回の便がある

 ▼旅館として三好屋其他があり宿料一円より二円まで

------------------------------------------------------

大井港の全景

今の大井港は、コンクリートで作成されたごく一般的な港。豊浜ほどではないが、漁船に釣り船と、それなりに盛ん。昭和13年の「非常に発展が期待されてゐる」という言葉に沿える現状であるかどうかはよく分からない。

「旅館の計画あり」というのは、今も営業してるこちらの旅館のことか?

大井にあった日本酒の蔵元、「渡辺嘉平次」銘酒勝祝

戦前から戦後しばらくは大変な繁盛振りで、仕込みの時期には近隣の農家も臨時雇いで大勢働いていたそうだ。しかし、その後は不振で後継者も絶えてしまい、今は往時の繁栄をしのばせる蔵が残るのみ。

「史蹟」で紹介されている「弘法大師上陸地」には今は割と立派な銅像が建っている。知多新四国めぐりは最近名鉄が盛んにウォーキングを売り出していて、「非常に多い」かどうかは知らんがそれなりに参拝者がいる

・「大井から和田に至る1050メートルの観光道路」というのは今の国道247号線のことだろうか

 名産として紹介されている「このわた」は今でも一軒生産しているところがあるが、全盛期に比べるとかなり産出量が減少しているそうだ。昔はこのわたに限らず蟹も山のように取れて困ったくらいだったのに、と祖母が嘆いていた。

 今の大井名物というと、末廣軒のたこつぼもなかですか。たこつぼの形をした最中で、小豆あんと抹茶あんが半分ずつ入っている。一個食うだけでなかなか重いが、味は良い

末廣軒


大きな地図で見る